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世界の鍋料理 ~ヨーロッパ篇~

日本だけではなく世界中のさまざまな国に、ひとつの鍋を囲んで食事を楽しむという文化があります。他の国の人たちは、どんな食材を使って、どんなスタイルで鍋料理を味わっているのでしょうか。国や地域の特色が見られる鍋料理を求めて、世界をめぐる旅を始めましょう。今回のテーマは、ヨーロッパです。

ヨーロッパの国々でも、寒い冬には温かい煮込み料理や鍋料理が家庭料理の定番です。以下に取り上げたほかにも、スイスのチーズフォンデュやオイルフォンデュ、フランスのブイヤベースやカスレ、イタリアのバーニャカウダなど、その国ごとの特色ある鍋料理があります。

 

スペイン 【コシード】Cocido

豆類と肉、野菜などを鍋で煮込んだ料理です。その原型とされるオジャ・ポドリータは、陶器のつぼで何時間も煮込んで作る、豚肉と豆、米、野菜が入った料理。日本語の「おじや」の語源ともいわれています。マドリードの郷土料理「コシード・マドレーニョ」は、最初にスープのみ供され、そのあとにメインとして具材を食べる、ボリューム満点の一品です。

 

ポルトガル 【カタプラーナ】Cataplana

カタプラーナは、二枚貝のように繋がっている銅製の鍋です。周囲の留め具でしっかり固定して調理することで、うま味が凝縮された蒸し煮ができあがります。発祥の地であるアルガルヴェ地方は漁業が盛んなため、魚介類と野菜を使うことが多いようですが、肉類を使うこともあります。味付けも、素朴なトマト味やコクのある生クリームなど多彩です。

 

ドイツ 【アイントプフ】Eintopf

アイン(ein)は「ひとつの」トプフ(topf)は「鍋」という意味です。フランスのポトフと同様に、大きめに切った野菜、肉、ソーセージなどをスープストックで煮込む作り方のほか、具材を並べて重ねて入れ、鍋ごとオーブンで加熱する作り方もあります。それぞれの家庭によって具材も作り方もさまざまな、まさに「おふくろの味」。冬の屋台料理としても人気があります。

 

ブルガリア 【ギュヴェチ】гювеч

日本の土鍋によく似た陶器の鍋ギュヴェチを使った鍋料理です。人参、じゃがいも、玉ねぎなどの野菜と、豚、牛、鶏などを調味してからオーブンなどで焼き、熱々のまま食卓へ。おいしさの秘密は、オーブンなどで加熱する前に、容器の口を練った小麦粉で密封すること。弱火で長時間煮込んだギュヴェチは、ハーブの香りが素材の味を一層引き立てます。

 

フランス 【ブイヤベース】bouillabaisse

世界三大スープのうちの一つといわれる、南フランスの漁師町発祥の郷土料理。沸騰(bouillir)したら弱火にする(abaisser)煮込み方が名前の由来です。たっぷりの魚・貝・えびなどの魚介類、トマト、玉ねぎ、にんにくに、サフランで色と香り付けをし、コトコトと煮込みます。アイオリソース(マヨネーズに似た南フランスのソース)を添えて供されます。

 

フランス 【ポトフ】pot-au-feu

potは鍋や壺、feuは火のことで、「火にかけた鍋」を意味します。大きく切った肉や野菜に香草を加えて煮込んだ、フランスの素朴な家庭料理です。材料を鍋に入れて火にかけるだけですが、じっくり時間をかけて煮込むのでうま味がたっぷり。本来は、スープはスープ皿に注ぎ、別の皿に肉や野菜を切り分けて、マスタードや塩などの調味料を添えていただくそうです。