読んで楽しむ鍋料理

この季節は鍋料理を食べる機会が増えるだけでなく、会話のなかに鍋料理登場することも多くなってきますね。そんなときに、思わず耳を傾けたくなるような話題を提供する本をご紹介します。さあ、あなたは読んでから食べますか、食べてから読みますか?

料理が登場する時代小説といえばこの作者

『そうざい料理帖 巻一』池波正太郎(平凡社)

『鬼平犯科帳』『剣客商売』の作者・池波正太郎は食道楽で知られ、小説のなかにもたびたび料理が登場します。本書は、日記や随筆を元に彼が愛した四季折々の素朴で手軽な江戸・東京のそうざい料理を紹介。白魚の小鍋立、カキ雑炊などを追体験できる一冊です。ちなみにシリーズ第二巻では明治・大正・昭和の味、むかしのホテルやレストランの味など、3つのテーマに分けて紹介しています。

ひそかに人気が続くあの鍋料理のネタ元です

『河童のスケッチブック』妹尾河童(文春文庫)

現代日本を代表する舞台美術家であり、スケッチ入りのエッセイ『河童が覗いた~』シリーズや、小説『少年H』でも知られる作者のロングセラー。この本に掲載された白菜と豚肉の鍋料理「ピエンロー」を家庭で楽しむ人は数知れず。1995年出版の単行本は横長で、文庫化は不可能と言われていましたが、なんと本を横にして縦開きで読む、という前代未聞の形態で文庫本が出版されたことも話題になりました。

人々に愛される土鍋を作る陶工の暮らしと料理

『土楽食楽』福森雅武(文化出版局)

著者は伊賀焼を代表する窯元「土楽窯」の7代目当主。土楽の個性的で美しい土鍋は、長年にわたってプロの料理人や料理好きの人々に愛されてきました。陶工でありながら、新鮮な食材で絶品の料理を作って客をもてなすことから、故白州正子も伊賀を度々訪れたそうです。自然と一体になった生活を続ける陶芸家の暮らしと、季節ごとの料理を紹介。美しい写真とともに、見て、読んで楽しめる一冊です。

ちゃんこを通して描かれた相撲の世界の人間模様

『相撲部屋ちゃんこ百景』佐藤祥子(河出文庫)

相撲を愛し、両国に暮らす著者が親方や力士に取材をして集めた、とっておきの「ちょっといい話」を集めた一冊。それぞれの部屋の歴史や伝統の味を通して、土俵上では窺い知ることができない、相撲界に生きる男たちの絆や個性的な人間模様を垣間みることができます。ちゃんこを作る様子や、力士たちが鍋を囲む風景が目の前に浮かんで、読後は温かいちゃんこ鍋のように心もほっこり温まります。

美食家で怠け者の奉行が名推理で事件を解決

『鍋奉行犯科帳シリーズ 1~7』田中啓文(集英社文庫)

“鍋奉行”こと大邉久右衛門(あだ名は「大鍋食う衛門」)が主人公の痛快時代小説です。大坂西町奉行所に赴任してきた型破りな奉行は、三度の御膳が最優先の美食家で、仕事をやる気なし。ところが、いざ事件が起きると人並みはずれた推理力・捜査能力を発揮して、たちどころに解決。謎解きの楽しさはもちろんのこと、作中に登場する江戸時代の美食メニューが想像力と胃袋を刺激します。

食べ物にまつわる人生ドラマを読み切りで

『深夜食堂 ①~⑰』安倍夜郎(小学館)

日本だけでなく、台湾や韓国でも実写化されている人気コミック。深夜12時から朝7時頃まで営業している「深夜食堂」は、食べたい物を注文すると(材料さえあれば)何でも作ってくれる店です。その結果、作品のなかに登場する人物の数だけメニューができることになります。「深夜食堂」の鍋料理といえば、コミック13巻に登場する「白菜と豚バラの一人鍋」。読むと食べたくなること請け合いです。

加藤いづみ

著者

加藤いづみ

コピーライター、ディレクター。15年にわたってPR誌の取材で全国各地に赴き、その土地の文化、風土、食などを体験してきた。また。料理記事の企画、撮影コーディネート、ディレクション多数。休暇には国内外に住む友人を訪ねて旅行することが多い。自分で作る料理は、イタリアン、エスニックが好き。